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この春は賤が垣根に触ればひて
梅が香とめん人親しまん

歌の意味
この春は、粗末な家の垣根に寄り添うようにして、梅の香を尋ねて来る人と親しくしよう。
鑑賞
春歌 37

詞書は前の歌に続き「山家梅」
 山家の梅の三首目である。この春は、粗末な家の垣根の梅のそばに身を寄せて、梅の香を尋ねて訪れる人とは親しく交わろう、と詠んでいる。
 三首は、香を尋ねる人を待つ心、通りすがりの人まで引き止める梅への用心、そして香を尋ねる人と親しもうという心へと移っている。山里の静けさを守りつつも、梅をきっかけとした人との交わりを受け入れる、穏やかな心境で結ばれている。

 初句「この春は」は、今年の春は、の意で、この春に限っての心づもりを示す。
 二句「賤が垣根に」は、身分の低い者の家の垣根に、の意で、前歌の二句と同じ語句を用いている。
 三句「触ればひて」は、触れ合うように寄り添って、の意である。
 四句「梅が香とめん」は、梅の香を尋ね求めて来るであろう、の意で、本巻の第三十五首の初句と同じ「とめん」を用いている。
 結句「人親しまん」の「ん」は意志を表し、そうした人と親しく交わろう、と結んでいる。

ふればふ:触れ合う、近く寄り添う
とむ:尋ね求める
作者
西行
出典
山家集
前の歌
心せん賤が垣根の梅はあやな よしなく過ぐる人とどめけり
次の歌
主いかに風渡るとていとふらん よそにうれしき梅の匂ひを