主いかに風渡るとていとふらん
よそにうれしき梅の匂ひを
- 歌の意味
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梅の持ち主は、風が吹き渡るからといって、どれほど嫌がっていることだろう。よそにいる私にとってはうれしい梅の匂いであるのに。
- 鑑賞
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春歌 38
詞書「嵯峨に住みけるに、道を隔てて坊の侍りけるより梅の風に散りけるを」
詞書によれば、嵯峨に住んでいたころ、道を隔てた向かいの僧坊から、梅の花が風に散って飛んできたのを詠んだ歌である。梅の持ち主は、風が花を散らすのを嫌がっていることだろうが、よそにいる自分にとっては、風が運んでくる梅の香がうれしい、と詠んでいる。
同じ風を、持ち主は花を散らすものとして嫌い、隣人は香を運ぶものとして喜ぶ、という立場の違いに目を向けたところに趣がある。
初句「主いかに」は、梅の持ち主はどんなに、の意である。
二句「風渡るとて」は、風が吹き渡るからといって、の意である。
三句「いとふらん」は、嫌がっていることだろう、の意で、推量の「らん」で持ち主の心を推し量り、三句切れとなる。
四句「よそにうれしき」は、よそにいる者にとってはうれしい、の意で、持ち主の嘆きと対照をなす。
結句「梅の匂ひを」は、詠嘆を込めた倒置の形で、うれしいのは梅の匂いであるのに、と結んでいる。
ばう:僧の住まい
ぬし:持ち主
いとふ:嫌がる、避ける
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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この春は賤が垣根に触ればひて 梅が香とめん人親しまん
- 次の歌
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梅が香を谷ふところに吹きためて 入り来ん人にしめよ春風