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梅が香を谷ふところに吹きためて
入り来ん人にしめよ春風

歌の意味
梅の香を谷の奥まったところに吹き集めておいて、ここへ入って来る人にしみこませておくれ、春風よ。
鑑賞
春歌 39

詞書「庵の前なりける梅を見てよみける」
 詞書によれば、庵の前に咲く梅を見て詠んだ歌である。山に囲まれた谷の奥に梅の香を吹き集めておき、訪れてくる人にその香をしみこませてほしい、と春風に呼びかけている。
 前歌では風が梅の香をよそへ運ぶことを喜んだが、この歌では逆に、風に梅の香を谷に閉じこめておくよう頼んでいる。訪れる人を梅の香でもてなしたいという、庵の主のやさしい心が感じられる。

 初句「梅が香を」は、梅の香りを、の意である。
 二句「谷ふところに」は、山に囲まれた谷の奥まったところに、の意で、庵のある場所を示す。
 三句「吹きためて」は、吹き集めてためておいて、の意である。
 四句「入り来ん人に」は、谷に入って来るであろう人に、の意で、庵を訪れる人を想定している。
 結句「しめよ春風」は、香りをしみこませよ、春風よ、の意で、命令形と体言の呼びかけで春風に語りかけて結んでいる。

たにふところ:山に囲まれた谷の奥まったところ
しむ:香りなどをしみこませる
作者
西行
出典
山家集
前の歌
主いかに風渡るとていとふらん よそにうれしき梅の匂ひを
次の歌
柴の庵にとくとく梅の匂ひ来て やさしき方もある住みかかな