古典和歌stream

ひとり寝る草の枕の移り香は
垣根の梅の匂ひなりけり

歌の意味
ひとりで寝る旅の枕に移り残った香りは、垣根に咲く梅の匂いであったのだ。
鑑賞
春歌 43

詞書「旅の泊まりの梅」
 旅の宿の梅を題とする歌である。旅先でひとり寝をした枕に香りが移っていたが、それは垣根に咲く梅の匂いであった、と詠む。
 「移り香」は本来、共寝をした人の香りが衣や枕に残ることをいう言葉である。ひとり寝の旅の枕に残る移り香が、人ではなく梅のものであったとすることで、旅の孤独と梅の風雅とを同時に表している。

 初句「ひとり寝る」は、共寝の相手もなくひとりで寝る、の意である。
 二句「草の枕の」は、旅寝の枕をいう。草を結んで枕にしたことから、旅寝そのものを表す。
 三句「移り香は」は、他のものから移り残った香りは、の意で、恋の歌で用いられる言葉を旅寝に用いている。
 四句「垣根の梅の」は、宿の垣根に咲く梅の、の意である。
 結句「匂ひなりけり」は、梅の匂いであったのだ、と気づきの「けり」で、移り香の正体を明かして結んでいる。

くさのまくら:草を結んで作った枕。旅寝
うつりが:他のものから移って残った香り
作者
西行
出典
山家集
前の歌
作りおきし苔の衾に鶯は 身にしむ梅の香や匂ふらん
次の歌
なにとなく軒なつかしき梅ゆゑに 住みけん人の心をぞ知る