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なにとなくおぼつかなきは天の原
霞に消えて帰る雁がね

歌の意味
なんとなく気がかりなのは、大空の霞の中に消えて、北へ帰っていく雁である。
鑑賞
春歌 46

詞書「霞中帰雁」
 霞の中を帰っていく雁を題とする歌で、次歌と二首が並ぶ。春になって北の国へ帰る雁が、大空の霞の中に消えていくのを見送り、その行方がなんとなく気がかりだ、と詠んでいる。
 霞に紛れて見えなくなる雁の姿に、去りゆくものへの心もとなさを重ねている。初句「なにとなく」は本巻の第四十四首と同じで、理由のはっきりしない心の動きを表す言葉として用いられている。

 初句「なにとなく」は、どういうわけということもなく、の意である。
 二句「おぼつかなきは」は、気がかりで落ち着かないのは、の意である。
 三句「天の原」は、広々とした大空をいう。
 四句「霞に消えて」は、霞の中に姿が見えなくなって、の意である。
 結句「帰る雁がね」は体言止めで、春になって北へ帰っていく雁を示して結んでいる。

あまのはら:広々とした大空
かりがね:雁。また雁の鳴き声
作者
西行
出典
山家集
前の歌
春雨の軒たれこむるつれづれに 人に知られぬ人の住みかか
次の歌
雁がねは帰る道にや迷ふらん 越の中山霞隔てて