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苗代の水を霞はたなびきて
打樋の上にかくるなりけり

歌の意味
苗代の水の上に霞はたなびいて、水を引く打樋の上にもかかっているのだなあ。
鑑賞
春歌 50

詞書「苗代」
 苗代を題とする歌である。稲の苗を育てる苗代の水面に霞がたなびき、さらに田に水を引くための樋の上にまでかかっている、という農村の春の景を詠む。
 「かくる」に、霞が「かかる」意と、樋で水を「掛ける」意とを重ね、霞と水とが同じように流れ渡る様子を描いている。前歌までの鳥の歌から、田の景へと題が移っている。

 初句「苗代の」は、稲の苗を育てる田の、の意である。
 二句「水を霞は」は、苗代の水の上を霞が、の意で、霞を主語として取り立てている。
 三句「たなびきて」は、霞が横に長くたなびいて、の意である。
 四句「打樋の上に」は、水を引くために掛け渡した樋の上に、の意である。
 結句「かくるなりけり」の「かく」は、霞が「かかる」意と、樋で水を「掛け」引く意とを掛けている。気づきの「けり」で結んでいる。

なはしろ:稲の苗を育てる田
うちひ:水を引くために掛け渡した樋
かく:霞がかかる意と、樋で水を掛け引く意を掛ける
作者
西行
出典
山家集
前の歌
山里へ誰をまたこはよぶこ鳥 ひとりのみこそ住まんと思ふに
次の歌
雲なくておぼろなりとも見ゆるかな 霞かかれる春の夜の月