空に出でていづくともなく尋ぬれば
雲とは花の見ゆるなりけり
- 歌の意味
-
上の空のまま家を出て、どこというあてもなく尋ね歩くと、雲と見えていたのは、実は花が雲のように見えていたのであった。
- 鑑賞
-
春歌 60
詞書は前の歌に続き「待花」
花を待つ歌の三首目である。花を待ちかねて、心も上の空のまま家を出て、どこというあてもなく探し歩いていると、遠くに雲と見えていたものが、実は咲いた花であった、と気づく喜びを詠んでいる。
山に咲く桜を白雲と見る見立ては古くからのものであるが、ここでは待ちわびた末に花を見つける発見の喜びとして描かれている。前歌のどの峰から咲くのかという問いに、答えを得たような配列となっている。
初句「空に出でて」は、心が上の空のまま出かけて、の意で、字余りとなっている。
二句「いづくともなく」は、どこというあてもなく、の意である。
三句「尋ぬれば」は、探し歩くと、の意である。
四句「雲とは花の」は、雲としては花が、の意で、遠くの桜が雲のように見えていたことを示す。
結句「見ゆるなりけり」は、そう見えていたのだ、と気づきの「けり」で発見の喜びを表して結んでいる。
たづぬ:探し求める
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
おぼつかないづれの山の峰よりか 待たるる花の咲きはじむらん
- 次の歌
-
雪閉ぢし谷の古巣を思ひ出でて 花にむつるる鶯の声