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花見ればそのいはれとはなけれども
心のうちぞ苦しかりける

歌の意味
花を見ると、これといった理由はないのだけれども、心の中が苦しくなることだ。
鑑賞
春歌 68

詞書は前の歌に続き「花の歌あまたよみけるに」
 花を見ると、はっきりした理由もないのに、なぜか胸の内が苦しくなる、と詠む。美しいものを前にしたときに湧き起こる、説明のつかない切なさを率直に言い表している。
 花の美しさに心を奪われることが、同時に、いずれ散る花を思う苦しさでもある、という心の動きが感じられる。前二首の、花に誘われて身を離れる心の歌に続き、花を見る心の内側を見つめた歌となっている。

 初句「花見れば」は、桜の花を見ると、の意である。
 二句「そのいはれとは」は、その理由としては、の意である。
 三句「なけれども」は、ないのだけれども、の意で、逆接で下に続く。
 四句「心のうちぞ」の「ぞ」は強意の係助詞で、結句の連体形「ける」と係り結びをなす。
 結句「苦しかりける」は、苦しいことだ、の意で、係り結びによって、理由のわからない苦しさを強く表して結んでいる。

いはれ:理由、わけ
作者
西行
出典
山家集
前の歌
あくがるる心はさても山桜 散りなんのちや身に帰るべき
次の歌
白川の梢を見てぞ慰むる 吉野の山に通ふ心を