風越の峰の続きに咲く花は
いつ盛りともなくや散りけん
- 歌の意味
-
風越の峰に連なって咲く花は、いつが盛りということもないまま散ってしまったのだろうか。
- 鑑賞
-
春歌 83
詞書は前の歌に続き「花の歌あまたよみけるに」
風越の峰の連なりに咲く花は、風の吹き越すその名のとおり、いつが盛りということもないうちに散ってしまったのだろうか、と思いやる歌である。
風越という地名に、花を散らす風を響かせているところに趣がある。盛りを迎える間もなく散る花への哀惜が、遠い山の花に寄せて詠まれている。
初句「風越の」は、信濃国の歌枕である風越の峰をいう。その名に、風が吹き越すことを響かせている。
二句「峰の続きに」は、峰の連なりに、の意である。
三句「咲く花は」は、そこに咲く桜の花を取り立てている。
四句「いつ盛りとも」は、いつが盛りということも、の意である。
結句「なくや散りけん」の「や」は疑問の係助詞で、過去推量の「けん」と係り結びをなし、盛りもないまま散ってしまったのだろうか、と結んでいる。
かざこし:信濃国の歌枕。風越の峰
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
のどかなれ心をさらに尽くしつつ 花ゆゑにこそ春は待ちしか
- 次の歌
-
ならひありて風誘ふとも山桜 尋ぬる我を待ちつけて散れ