今よりは花見ん人に伝へおかん
世を遁れつつ山に住まへと
- 歌の意味
-
これからは、花を見ようとする人に言い伝えておこう。俗世を逃れて山に住めと。
- 鑑賞
-
春歌 86
詞書は前の歌に続き「花の歌あまたよみけるに」
これから花を見ようとする人々に、本当に花を味わいたいなら、世を逃れて山に住むがよい、と伝えておこう、と詠む歌である。
世を捨てて山に住んだからこそ、心ゆくまで花を見ることができたという、出家者としての実感が込められている。花の歌二十五首の結びとして、花を愛する者の生き方を説く形で一連を締めくくっている。
初句「今よりは」は、これからは、の意である。
二句「花見ん人に」は、花を見ようとする人に、の意である。
三句「伝へおかん」の「ん」は意志を表し、言い伝えておこう、と言い切って三句切れとなる。
四句「世を遁れつつ」は、俗世を逃れて、の意で、出家や隠棲をいう。
結句「山に住まへと」は、山に住めと、の意で、伝える内容を倒置の形で示して結んでいる。
のがる:逃れる、避ける
つたへおく:言い残しておく
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
裾野焼く煙ぞ春は吉野山 花を隔つる霞なりける
- 次の歌
-
花見にと群れつつ人の来るのみぞ あたら桜の咎にはありける