古典和歌stream

雲にまがふ花の下にて眺むれば
おぼろに月は見ゆるなりける

歌の意味
雲と見まがう花の下で眺めると、月はおぼろに見えることだ。
鑑賞
春歌 90

詞書「花の下にて月を見てよみける」
 詞書によれば、桜の花の下で月を見て詠んだ歌である。雲と見まがうほどに咲き満ちた花の下から月を眺めると、月が花に隔てられておぼろに見える、と詠んでいる。
 本巻の第五十一首は、雲がないのに霞によっておぼろに見える春の月を詠んでいたが、この歌では雲のような花によって月がおぼろに見えている。花と月という二つの美を一つの景に収めた歌である。

 初句「雲にまがふ」は、雲と見分けがつかないほどの、の意で、字余りとなっている。
 二句「花の下にて」は、桜の花の下で、の意である。
 三句「眺むれば」は、物思いにふけりながら見つめると、の意である。
 四句「おぼろに月は」は、月はぼんやりかすんで、の意である。
 結句「見ゆるなりける」は連体形で結ぶ連体止めで、花越しにおぼろに見える月への感慨を余情として残している。

まがふ:見分けがつかないほどよく似る
ながむ:物思いにふけりながら見つめる
作者
西行
出典
山家集
前の歌
年を経て同じ梢に匂へども 花こそ人に飽かれざりけれ
次の歌
花の色や声に染むらん鶯の 鳴く音異なる春の曙