- 歌の意味
-
花の色が声に染みこんでいるのだろうか。鶯の鳴く声がいつもとは違って聞こえる春の曙よ。
- 鑑賞
-
春歌 91
詞書「春の曙花見けるに鶯の鳴きければ」
詞書によれば、春の曙に花を見ていたところ、鶯が鳴いたので詠んだ歌である。花のもとで鳴く鶯の声がいつもと違って美しく聞こえるのは、花の色が声に染みこんでいるからだろうか、と詠む。
色が声に染みるという、視覚と聴覚とを重ね合わせた表現に工夫がある。結句「春の曙」は本巻の第二首、第三十一首と同じで、ここでは花と鶯とがそろった、春の情趣のきわまった曙が描かれている。
初句「花の色や」は字余りで、「や」は疑問の係助詞として二句の「らん」と係り結びをなす。
二句「声に染むらん」は、鶯の声に染みこんでいるのだろうか、の意で、推量の「らん」で二句切れとなる。
三句「鶯の」は、四句の「鳴く音」に続く。
四句「鳴く音異なる」は、鳴く声がいつもと異なっている、の意である。
結句「春の曙」は体言止めで、本巻の第二首、第三十一首と同じ結句を用い、花と鶯のそろう夜明けの景を示して結んでいる。
そむ:色や思いがしみこむ
ね:鳴き声、音
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
雲にまがふ花の下にて眺むれば おぼろに月は見ゆるなりける
- 次の歌
-
おのづから花なき年の春もあらば 何につけてか日を暮らすべき