思ひ出に何をかせましこの春の
花待ちつけぬ我が身なりせば
- 歌の意味
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もしこの春の花を待ち迎えることのできない我が身であったなら、何をこの世の思い出にすればよかっただろう。
- 鑑賞
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春歌 93
詞書「老見花と云ふ事を」
老いて花を見るという題の歌である。年老いた身で、もしこの春の花を見ることなく命が尽きていたら、何をこの世の思い出にすればよかっただろう、と詠む。
老いの身にとって、一年一年の花との出会いがかけがえのない思い出となることを、反実仮想の形で表している。今年も花を見ることができた喜びと、残り少ない春への思いとがにじんでいる。
初句「思ひ出に」は、この世の思い出として、の意で、字余りとなっている。
二句「何をかせまし」の「か」は疑問の係助詞、「まし」は反実仮想で、何をしたらよかっただろう、と問いかけて二句切れとなる。
三句「この春の」は、今年の春の、の意である。
四句「花待ちつけぬ」は、花の咲くのを待ち迎えることができない、の意である。
結句「我が身なりせば」は、我が身であったならば、の意で、二句の「まし」と呼応する仮定を倒置の形で示して結んでいる。
おもひいで:思い出
まちつく:待ち受ける、来るのを待ち迎える
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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おのづから花なき年の春もあらば 何につけてか日を暮らすべき
- 次の歌
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わきて見ん老い木は花もあはれなり 今いくたびか春にあふべき