待ち来つる八上の桜咲きにけり
荒くおろすな三栖の山風
- 歌の意味
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待ち続けてきた八上の桜が咲いたことだ。荒々しく吹きおろすな、三栖の山風よ。
- 鑑賞
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春歌 98
詞書「熊野へ参りけるに、八上の王子の花おもしろかりければ、社に書きつけける」
詞書によれば、熊野へ参詣する途中、八上の王子社の桜が美しかったので、社に書きつけた歌である。待ちわびていた八上の桜がようやく咲いた、三栖の山から吹きおろす風よ、どうか荒々しく吹いて散らさないでくれ、と呼びかけている。
熊野への参詣道には、熊野権現の御子神を祀る王子社が点在しており、八上の王子もその一つである。旅の途上で出会った花を慈しむ心が、山風への呼びかけとして素直に表されている。
初句「待ち来つる」は、待ち続けてきた、の意である。
二句「八上の桜」は、紀伊国の八上の王子社の桜をいう。
三句「咲きにけり」は、咲いたことだ、と気づきの「けり」で喜びを表して三句切れとなる。
四句「荒くおろすな」は、荒々しく吹きおろすな、の意で、「な」は禁止を表す。
結句「三栖の山風」は体言止めの呼びかけで、紀伊国の三栖の山から吹きおろす風に語りかけて結んでいる。
わうじ:熊野への参詣道に祀られた、熊野権現の御子神の社
おろす:山から風が吹き下ろす
みす:紀伊国の地名
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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眺むるに花の名立ての身ならずは この里にてや雲を暮らさん
- 次の歌
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おのづから来る人あらばもろともに 眺めまほしき山桜かな