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見る人に花も昔を思ひ出でて
恋しかるべし雨にしをるる

歌の意味
花を見る人と同じように、花も昔を思い出して恋しく思っているにちがいない。雨にうちしおれているのは。
鑑賞
春歌 101

詞書「上西門院の女房、法勝寺の花見侍りけるに、雨の降りて暮れにければ帰られにけり、又の日、兵衛の局のもとへ、花の御幸思ひ出でさせ給ふらんとおぼえて、かくなん申さまほしかりしとて遣はしける」
 詞書によれば、上西門院に仕える女房たちが法勝寺へ花見に出かけたが、雨が降って日も暮れたので帰ってしまった。その翌日、女房たちはかつての花の御幸を思い出していたことだろうと思い、兵衛の局のもとへ、こう申し上げたかったと言って送った歌である。
 花見の人々が昔を懐かしむように、雨にしおれている花もまた昔を恋しがっているのだろう、と花を人に重ねている。雨にぬれた花の姿を、昔を偲ぶ涙に見立てた点に趣があり、次歌の兵衛の返しと一組の贈答をなす。

 初句「見る人に」は、花を見る人と同じように、の意である。
 二句「花も昔を」は、花もまた昔を、の意で、花を人に見立てている。
 三句「思ひ出でて」は、思い出して、の意で、字余りとなっている。
 四句「恋しかるべし」の「べし」は確信をもった推量を表し、恋しく思っているにちがいない、と言い切って四句切れとなる。
 結句「雨にしをるる」は、雨にうちしおれている、の意で、連体形で言いさし、しおれた花の姿を昔を恋う涙の姿として示して結んでいる。

にょうばう:宮中や院の御所に仕える女官
ごかう:上皇や女院のお出まし
しをる:草木がぐったりとしおれる
作者
西行
出典
山家集
前の歌
眺むてふ数に入るべき身なりせば 君が宿にて春は経ぬべし
次の歌
いにしへをしのぶる雨と誰か見ん 花もその世の友しなければ