いにしへをしのぶる雨と誰か見ん
花もその世の友しなければ
- 歌の意味
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この雨を、昔を偲ぶ涙の雨だと誰が見るだろうか。花にも、その昔の世をともに過ごした友はもういないのだから。
- 鑑賞
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春歌 102
詞書「返し。若き人々ばかりなん、老いにける身は、風のわづらはしさに厭はるる事にてとありける、やさしく聞こえけり」
前歌の西行の歌に対する兵衛の局の返しである。この雨を昔を偲ぶ雨だと見る人などいるだろうか、花にとっても、その昔をともに過ごした友はもういないのだから、と答えている。
詞書には、花見に出かけたのは若い人々ばかりで、年老いた身は風のわずらわしさを嫌って出かけなかったという兵衛の言葉が添えられ、西行はそれを優美に感じたと記している。昔を知る者が少なくなった寂しさを、花の身に寄せて詠んだ返しである。作者の兵衛は上西門院に仕えた女房歌人である。
初句「いにしへを」は、過ぎ去った昔を、の意である。
二句「しのぶる雨と」は、懐かしく思い出す涙の雨と、の意で、前歌の雨に昔を恋う涙を見た趣向を受けている。
三句「誰か見ん」の「か」は反語で、誰がそう見るだろうか、いや誰も見ない、の意を表し、三句切れとなる。
四句「花もその世の」は、花にもその昔の世の、の意である。
結句「友しなければ」の「し」は強意で、ともに過ごした友がもういないのだから、と理由を倒置の形で示して結んでいる。
しのぶ:昔を懐かしく思い出す
よ:時代、その頃
- 作者
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上西門院兵衛
- 出典
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山家集
- 前の歌
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見る人に花も昔を思ひ出でて 恋しかるべし雨にしをるる
- 次の歌
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濡るともと陰を頼みて思ひけん 人の跡踏む今日にもあるかな