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吉野山谷へたなびく白雲は
峰の桜の散るにやあるらん

歌の意味
吉野山の谷へとたなびいている白雲は、峰の桜が散っているのだろうか。
鑑賞
春歌 110

詞書は前の歌に続き「落花の歌あまたよみけるに」
 吉野山の谷へと流れるようにたなびく白雲を見て、あれは峰の桜が散って谷へと舞い下りていく姿なのだろうか、と見立てる歌である。
 これまで咲き誇る桜を峰の白雲に見立ててきたが、ここでは散る花びらの流れを谷へたなびく白雲に見立てている。同じ雲の見立てが、開花から落花へと移り変わっていく。

 初句「吉野山」は、大和国の桜の名所である。
 二句「谷へたなびく」は、谷のほうへ横に長く流れていく、の意である。
 三句「白雲は」は、その白雲は、の意で、散る花びらを雲に見立てている。
 四句「峰の桜の」は、峰に咲く桜の、の意である。
 結句「散るにやあるらん」の「や」は疑問の係助詞で、推量の「らん」と係り結びをなし、散っているのだろうか、と結んでいる。

たなびく:雲や霞が横に長く引く
作者
西行
出典
山家集
前の歌
年を経て待つも惜しむも山桜 心を春は尽くすなりけり
次の歌
吉野山峰なる花はいづかたの 谷にかわきて散り積もるらん