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山おろしの木の下埋む春の雪は
岩井に浮くも氷とぞ見る

歌の意味
山から吹きおろす風が木の下を埋めつくす春の雪、すなわち散った花びらは、岩井の水に浮かんでいるのまでも氷のように見える。
鑑賞
春歌 112

詞書は前の歌に続き「落花の歌あまたよみけるに」
 山おろしの風に散らされ、木の下を埋めつくした花びらを春の雪に見立て、岩間の泉に浮かぶ花びらまでも氷のように見える、と詠む歌である。
 散り敷く花を雪に、水に浮かぶ花を氷に見立て、二重の見立てによって春の中に冬の景を描き出している。花びらの白さと冷ややかな美しさが印象づけられる。

 初句「山おろしの」は、山から吹きおろす風の、の意で、字余りとなっている。
 二句「木の下埋む」は、木の下を埋めつくす、の意である。
 三句「春の雪は」は、散り敷いた花びらを雪に見立てた表現で、字余りとなっている。
 四句「岩井に浮くも」は、岩間から湧く泉に浮かんでいるのも、の意である。
 結句「氷とぞ見る」の「ぞ」は強意の係助詞で、連体形「見る」と係り結びをなし、水に浮かぶ花を氷と見る、と結んでいる。

やまおろし:山から吹き下ろす風
うづむ:すっかり覆って見えなくする
いはゐ:岩の間から湧き出る泉
作者
西行
出典
山家集
前の歌
吉野山峰なる花はいづかたの 谷にかわきて散り積もるらん
次の歌
春風の花の吹雪に埋まれて ゆきもやられぬ志賀の山道