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惜しめども思ひげもなくあだに散る
花は心ぞかしこかりける

歌の意味
いくら惜しんでも、未練の気配も見せずにはかなく散っていく花は、その心が賢明なのであった。
鑑賞
春歌 121

詞書は前の歌に続き「落花の歌あまたよみけるに」
 人がどれほど惜しんでも、少しも未練を見せずにあっさりと散っていく花は、心が賢いのだ、と詠む歌である。
 散る花を恨むのではなく、この世に執着しない花の潔さを、悟った者の賢さとしてたたえている。花への執着を断ち切れない自分と、未練なく散る花とを、言外に対比させている。

 初句「惜しめども」は、人がいくら惜しんでも、の意である。
 二句「思ひげもなく」は、未練がましい様子もなく、の意である。
 三句「あだに散る」は、はかなく散る、の意である。
 四句「花は心ぞ」の「ぞ」は強意の係助詞で、結句の連体形「ける」と係り結びをなす。
 結句「かしこかりける」は、賢明なのであった、の意で、この世に執着しない花の心をたたえて結んでいる。

おもひげ:思いを抱いている様子。未練の気配
作者
西行
出典
山家集
前の歌
眺むとて花にもいたく馴れぬれば 散る別れこそ悲しかりけれ
次の歌
梢吹く風の心はいかがせん 従ふ花の恨めしきかな