散る花を惜しむ心やとどまりて
また来ん春の種になるべき
- 歌の意味
-
散る花を惜しむ心がこの世にとどまって、また来る春に花を咲かせる種となるのだろうか。
- 鑑賞
-
春歌 127
詞書は前の歌に続き「落花の歌あまたよみけるに」
散る花を惜しむ心がこの世にとどまり、それが次の春にふたたび花を咲かせる種となるのだろうか、と思いを巡らせる歌である。
散る花を惜しむ心を、花そのものの種になぞらえ、惜別の思いを次の春への希望へと転じている。花の散る悲しみの中に、季節の巡りへの期待を見いだしている。
初句「散る花を」は、散っていく花を、の意である。
二句「惜しむ心や」の「や」は疑問の係助詞で、結句の連体形「べき」と係り結びをなす。
三句「とどまりて」は、この世にとどまって、の意である。
四句「また来ん春の」は、ふたたびやって来る春の、の意である。
結句「種になるべき」は、種になるのだろうか、の意で、惜しむ心が花を咲かせるもとになるかと問いかけて結んでいる。
たね:物事のもととなるもの
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
雪と見えて風に桜の乱るれば 花のかさ着る春の夜の月
- 次の歌
-
春深み枝も揺るがで散る花は 風の咎にはあらぬなるべし