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吉野山ひとむら見ゆる白雲は
咲き遅れたる桜なるべし

歌の意味
吉野山にひとかたまりだけ見える白雲は、咲き遅れた桜なのだろう。
鑑賞
春歌 142

詞書「遠山残花」
 遠い山に残る花を題とする歌である。花の散った吉野山に、ひとかたまりだけ白雲のようなものが見えるのは、ほかより遅れて咲いた桜が残っているのだろう、と遠望している。
 花盛りの吉野を白雲で満たしてきた見立てが、ここでは散り残ったわずかな桜を、ひとかたまりの白雲として描いている。花の季節の終わりを、遠い山の小さな白さに見いだしている。

 初句「吉野山」は、大和国の桜の名所である。
 二句「ひとむら見ゆる」は、ひとかたまりだけ見える、の意である。
 三句「白雲は」は、その白雲は、の意で、残った桜を雲に見立てている。
 四句「咲き遅れたる」は、ほかより遅れて咲いた、の意である。
 結句「桜なるべし」は、桜なのだろう、の意で、推量の「べし」で白雲の正体を推し量って結んでいる。

ひとむら:ひとかたまり
作者
西行
出典
山家集
前の歌
梢打つ雨にしをれて散る花の 惜しき心を何にたとへん
次の歌
吉野山人に心をつけ顔に 花よりさきにかかる白雲