古典和歌stream

山寒み花咲くべくもなかりけり
あまりかねても尋ね来にける

歌の意味
山がまだ寒いので、花が咲きそうな気配もなかった。あまりにも早くから尋ねて来てしまったことだ。
鑑賞
春歌 144

詞書は前の歌に続き「花歌十五首よみけるに」
 花を待ちかねて山へ尋ねて来たものの、山はまだ寒く、花が咲く気配すらなかった。あまりにも早く来すぎてしまった、と苦笑するような歌である。
 花を待つ心がはやるあまりに、季節を先取りしてしまった自分の姿を、ユーモアを交えて描いている。前歌で花より先にかかる白雲が詠まれたのに続き、ここでは花より先に山へ来てしまった人が詠まれている。

 初句「山寒み」は、山が寒いので、の意で、「み」は原因や理由を表す。
 二句「花咲くべくも」は、花が咲きそうにも、の意である。
 三句「なかりけり」は、なかったことだ、と気づきの「けり」で言い切る三句切れである。
 四句「あまりかねても」は、あまりにも前もって、早すぎるほどに、の意である。
 結句「尋ね来にける」は、尋ねて来てしまったことだ、の意で、連体形で結び、早く来すぎた自分への思いを余情として残している。

たづぬ:探し求める
作者
西行
出典
山家集
前の歌
吉野山人に心をつけ顔に 花よりさきにかかる白雲
次の歌
かたばかりつぼむと花を思ふより そそまた心ものになるらん