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かたばかりつぼむと花を思ふより
そそまた心ものになるらん

歌の意味
わずかに蕾がふくらんだと花のことを思うそのときから、もう心は花のことでいっぱいになってしまうのだろう。
鑑賞
春歌 145

詞書は前の歌に続き「花歌十五首よみけるに」
 花がほんのわずかに蕾をつけたと思ったその時から、早くも心は花のことで占められ、落ち着かなくなってしまうのだろう、と詠む歌である。
 咲く前の蕾の段階から、すでに花に心を奪われてしまう自分の心を見つめている。前歌の、早く来すぎて花の気配もなかった歌に続き、ここではわずかな蕾にも心が揺れる様子を描き、一連の花を待つ心が進んでいる。四句の「そそまた」は、他の伝本では「そらまた」と見える。

 初句「かたばかり」は、ほんのわずか、形ばかり、の意である。
 二句「つぼむと花を」は、花が蕾をつけたと、の意である。
 三句「思ふより」は、思うそのときから、の意である。
 四句「そそまた心」は、もうまた心は、の意で、落ち着かない心の動きを示す。
 結句「ものになるらん」は、心が花のことでいっぱいになるのだろう、の意で、推量の「らん」で結んでいる。

かたばかり:ほんのわずか、形だけ
つぼむ:蕾をつける
作者
西行
出典
山家集
前の歌
山寒み花咲くべくもなかりけり あまりかねても尋ね来にける
次の歌
おぼつかな谷は桜のいかならん 峰にはいまだかけぬ白雲