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おぼつかな谷は桜のいかならん
峰にはいまだかけぬ白雲

歌の意味
気がかりなことだ。谷の桜はどうなっているだろう。峰にはまだ、花と見まがう白雲はかかっていないが。
鑑賞
春歌 146

詞書は前の歌に続き「花歌十五首よみけるに」
 峰にはまだ白雲のような桜の姿は見えないが、暖かい谷のほうでは桜はどうなっているだろう、と気にかける歌である。
 峰と谷とを対比させ、まだ咲かない峰の花に対して、先に咲いているかもしれない谷の花へと思いを向けている。初句「おぼつかな」は本巻の第五十九首と同じで、そこではどの峰から花が咲きはじめるかと案じていたが、ここでは峰より先に谷の花を案じている。

 初句「おぼつかな」は、形容詞「おぼつかなし」の語幹で、気がかりだ、と詠嘆する初句切れである。
 二句「谷は桜の」は、谷では桜が、の意で、峰と対比されている。
 三句「いかならん」は、どうなっているだろう、の意で、推量の「ん」で三句切れとなる。
 四句「峰にはいまだ」は、峰にはまだ、の意である。
 結句「かけぬ白雲」は体言止めで、峰にまだかかっていない、花と見まがう白雲を示して結んでいる。

みね:山の頂
作者
西行
出典
山家集
前の歌
かたばかりつぼむと花を思ふより そそまた心ものになるらん
次の歌
花と聞くは誰もさこそはうれしけれ 思ひしづめぬ我が心かな