いざ今年散れと桜を語らはん
なかなかさらば風や惜しむと
- 歌の意味
-
さあ、今年は「散れ」と桜に言い聞かせてみよう。そうすれば、かえって風のほうが花を惜しんで散らさないかと思って。
- 鑑賞
-
春歌 150
詞書は前の歌に続き「花歌十五首よみけるに」
今年はひとつ、桜に向かって「散ってしまえ」と言ってみよう。そうすれば、天邪鬼な風が、かえって花を惜しんで散らさずにおくかもしれないから、と詠む歌である。
花を惜しめば惜しむほど風に散らされるという思いを逆手にとり、あべこべの手を試みようとする、機知に富んだ歌である。花を守りたい一心からの、ユーモラスな策略が描かれている。
初句「いざ今年」は、さあ今年は、の意で、思い立った気持ちを表す。
二句「散れと桜を」は、散れと桜に、の意で、本心とは逆の言葉である。
三句「語らはん」は、言い聞かせよう、の意で、三句切れとなる。
四句「なかなかさらば」は、そうすればかえって、の意である。
結句「風や惜しむと」の「や」は疑問の係助詞で、風のほうが惜しむかと思って、と三句の理由を倒置の形で示して結んでいる。
かたらふ:語り聞かせる、説き聞かせる
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
おぼつかな花は心の春にのみ いづれの年かうかれ初めけん
- 次の歌
-
風吹くと枝を離れて落つまじく 花綴ぢつけよ青柳の糸