古典和歌stream

吹く風のなめて梢に当たるかな
かばかり人の惜しむ桜に

歌の意味
吹く風は、どの梢にも分け隔てなく吹き当たることだなあ。これほど人が惜しんでいる桜にまでも。
鑑賞
春歌 152

詞書は前の歌に続き「花歌十五首よみけるに」
 吹く風は、どの木の梢にも一様に吹きつけていく。これほど人々が散るのを惜しんでいる桜にも、ほかの木と同じように吹き当たるのだ、と嘆く歌である。
 人の思いに少しも配慮せず、桜もほかの木も区別しない風の非情さを嘆いている。前歌で柳の糸に花を綴じとめてほしいと願った心が、ここでは容赦のない風への恨みとなっている。

 初句「吹く風の」は、吹く風が、の意である。
 二句「なめて梢に」の「なめて」は、すべて一様に、の意で、どの梢にも分け隔てなく、の意を表す。
 三句「当たるかな」は、吹き当たることよ、と詠嘆の「かな」で三句切れとなる。
 四句「かばかり人の」は、これほどまでに人が、の意である。
 結句「惜しむ桜に」は、惜しんでいる桜にも、の意で、倒置の形で嘆きの対象を示して結んでいる。

あたる:風などが吹きつける
作者
西行
出典
山家集
前の歌
風吹くと枝を離れて落つまじく 花綴ぢつけよ青柳の糸
次の歌
何とかくあだなる春の色をしも 心に深く染めはじめけん