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何とかくあだなる春の色をしも
心に深く染めはじめけん

歌の意味
どうしてこのように、はかない春の花の色を、よりによって心に深く染めはじめたのだろう。
鑑賞
春歌 153

詞書は前の歌に続き「花歌十五首よみけるに」
 すぐに散ってしまうはかない春の花の色を、どうしてよりによって、こんなにも深く心に染めはじめてしまったのだろう、と自らを振り返る歌である。
 はかないものと知りながら、それに深く心を寄せてしまう自分をいぶかしんでいる。本巻の第百四十九首で、いつから花に浮かれはじめたのかと問うた心と通い合い、花への執着の始まりを問いかけている。

 初句「何とかく」は、どうしてこのように、の意で、四句以下の疑問を導く。
 二句「あだなる春の」は、はかない春の、の意である。
 三句「色をしも」の「しも」は強意で、よりによってその色を、と強めている。
 四句「心に深く」は、心に深く、の意である。
 結句「染めはじめけん」は、染めはじめたのだろう、の意で、過去推量の「けん」で結んでいる。

そむ:色や思いを深くしみこませる
作者
西行
出典
山家集
前の歌
吹く風のなめて梢に当たるかな かばかり人の惜しむ桜に
次の歌
同じ身の珍しからず惜しめばや 花もかはらず咲けば散るらん