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うれしとも思ひぞわかぬほととぎす
春聞くことのならひなければ

歌の意味
うれしいとも、はっきり思い分けることができない、ほととぎすの声は。春に聞くことなど、ならいではないのだから。
鑑賞
春歌 169

詞書「春のうちにほととぎすを聞くと云ふ事を」
 春のうちにほととぎすの声を聞くという題の歌である。ほととぎすは夏の訪れを告げる鳥であり、春に鳴くことはないのがならいである。そのため、春のうちにその声を聞いても、うれしいとはっきり感じてよいものか、戸惑ってしまう、と詠む。
 季節外れの初音に対する戸惑いを率直に表しつつ、春の終わりが近づき、夏の気配が忍び寄っていることを感じさせる。春の部の終わりに、次の季節への橋渡しとして置かれた歌である。

 初句「うれしとも」は、うれしいとも、の意である。
 二句「思ひぞわかぬ」の「ぞ」は強意の係助詞で、連体形の「わかぬ」と係り結びをなす。はっきり思い分けることができない、の意である。
 三句「ほととぎす」は、夏を告げる鳥で、三句切れとなる。
 四句「春聞くことの」は、春に聞くことの、の意である。
 結句「ならひなければ」は、ならいではないので、の意で、戸惑う理由を倒置の形で示して結んでいる。

わく:区別する、判断する
ならひ:世の習わし、きまり
作者
西行
出典
山家集
前の歌
水錆ゐて月も宿らぬ濁り江に 我すまんとて蛙鳴くなり
次の歌
過ぐる春潮のみつより船出して 波の花をや先に立つらん