過ぐる春潮のみつより船出して
波の花をや先に立つらん
- 歌の意味
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過ぎ去っていく春は、潮の満ちる三津の浦から船出して、波の花を先に立てて行くのだろうか。
- 鑑賞
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春歌 170
詞書「伊勢にまかりたりけるに、みつと申す所にて、海辺暮と云ふ事を神主どもよみけるに」
詞書によれば、伊勢へ出かけた折、みつという所で、神主たちと海辺の暮れという題で歌を詠んだときの作で、春の暮れに寄せて詠んでいる。過ぎ去っていく春は、潮の満ちるみつの浦から船出して、白く砕ける波の花を先頭に立てて去っていくのだろうか、と詠む。
「みつ」に潮が「満つ」と地名の「三津」とを掛け、春を船出していく旅人に見立てている。去りゆく春を、波の花を先立てた船旅として描いた、海辺ならではの暮春の歌である。
初句「過ぐる春」は、過ぎ去っていく春、の意で、春を擬人化している。
二句「潮のみつより」の「みつ」は、潮が「満つ」と、伊勢国の地名「三津」とを掛けた掛詞である。
三句「船出して」は、船出をして、の意で、去りゆく春を船旅にたとえている。
四句「波の花をや」は、白く砕ける波を花に見立てた表現で、「や」は疑問の係助詞として結句の「らん」と係り結びをなす。
結句「先に立つらん」は、先に立てて行くのだろうか、の意で、推量の「らん」で結んでいる。
みつ:潮が満つ意と、伊勢国の地名三津を掛ける
なみのはな:白く砕ける波を花に見立てた語
かんぬし:神社に仕える神職
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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うれしとも思ひぞわかぬほととぎす 春聞くことのならひなければ
- 次の歌
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春ゆゑにせめても物を思へとや 三十日にだにも足らで暮れぬる