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草しげる道刈りあけて山里は
花見し人の心をぞ知る

歌の意味
草の生い茂った道を刈り開けてみて、山里では、春に花を見に来た人の心がよくわかることだ。
鑑賞
夏歌 175

詞書「夏歌中に」
 詞書の「夏歌中に」から、夏の歌として詠んだ中の一首であることがわかる。春には花を見ようと多くの人が通った山里の道も、夏になると草が生い茂り、訪れる人もなくなる。その道を刈り開けながら、花の盛りのときだけやって来た人々の心を思い知る、という山里住まいの感慨を詠んでいる。
 前歌が衣は替えても心は春を慕うと詠んだのに対し、この歌は世の人の心がすでに春の花から離れていることを見つめており、春への思いをめぐって自分と世の人との違いが対比されている。

 初句「草しげる」は、夏になって草が生い茂るさまをいい、人の訪れが絶えたことを暗示する。
 二句「道刈りあけて」は、茂った草を刈って道を通れるようにすることをいう。
 三句「山里は」は、西行が住む山中の住まいを指し、「は」で取り立てて、山里ならではの感慨であることを示す。
 四句「花見し人の」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、春に花を見に訪れた人々を指す。
 結句「心をぞ知る」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「知る」で結ぶ係り結びで、花のときだけ訪れた人の心を思い知ったことを強めている。

かりあく:草などを刈って道を通れるようにする
やまざと:山の中にある人里や住まい
作者
西行
出典
山家集
前の歌
限りあれば衣ばかりは脱ぎかへて 心は春を慕ふなりけり
次の歌
竜田川岸の籬を見渡せば 井堰の波にまがふ卯の花