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まがふべき月なき頃の卯の花は
夜さへさらす布かとぞ見る

歌の意味
見まがうはずの月の光もない頃の卯の花は、夜までも晒している白い布かと見えることだ。
鑑賞
夏歌 177

詞書「夜の卯の花」
 詞書「夜の卯の花」の題で詠まれた歌である。白い卯の花は月の光と見まがうものとされるが、その月もない闇夜の頃には、卯の花はまるで夜になっても晒し続けている白い布のように見える、と詠む。
 前歌が卯の花を井堰の白波に見立てたのに対し、この歌は夜の闇の中で白く浮かぶ卯の花を晒し布に見立てている。昼の川辺から夜の闇へと場面を移しながら、卯の花の白さを別のものに見立てる趣向が続いている。

 初句「まがふべき」は、見まがうはずの、という意で、二句の「月」にかかる。卯の花の白さは月光に見立てられることが多く、それを踏まえた表現である。前歌の結句の「まがふ」を受けている。
 二句「月なき頃の」は、月の出ない闇夜の頃をいう。
 三句「卯の花は」は、闇の中に白く咲く卯の花を取り立てている。
 四句「夜さへさらす」の「さへ」は添加を表し、昼だけでなく夜までも、の意である。「さらす」は布を水で洗い日に当てて白くすることをいう。
 結句「布かとぞ見る」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「見る」で結ぶ係り結びで、卯の花を白い晒し布と見たことを強めている。

さらす:布を水で洗ったり日に当てたりして白くする
作者
西行
出典
山家集
前の歌
竜田川岸の籬を見渡せば 井堰の波にまがふ卯の花
次の歌
神垣のあたりに咲くもたよりあれや 木綿かけたりと見ゆる卯の花