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郭公人に語らぬ折にしも
初音聞くこそかひなかりけれ

歌の意味
ほととぎすよ、人と話をしない無言の行の折に限って、その初音を聞くとは、人に語って聞かせることもできず、かいのないことだ。
鑑賞
夏歌 179

詞書「無言なりけるころ、郭公の初声を聞きて」
 詞書から、無言の行を修していたころ、ほととぎすの初音を聞いて詠んだ歌であることがわかる。ほととぎすの初音は人に語って喜び合うものであるのに、ちょうど誰とも話さない無言の行の最中に聞いてしまい、そのうれしさを人に語ることもできない、と詠む。
 「語らふ」はほととぎすが鳴くことにも用いられる語であり、鳥は鳴いて語るのに自分は語れないという取り合わせに、僧としての西行の暮らしぶりがうかがわれる。

 初句「郭公」は、夏の訪れを告げる鳥で、その年初めての鳴き声である初音が特に待たれた。
 二句「人に語らぬ」は、無言の行のために人と言葉を交わさないことをいう。ほととぎすの鳴き声を「語らふ」と言い表すこともあり、自分だけが語れないことが際立っている。
 三句「折にしも」の「しも」は強意で、よりによってそのような折に、という意を表す。
 四句「初音聞くこそ」は、係助詞「こそ」で強調している。
 結句「かひなかりけれ」は、四句の「こそ」を受けて已然形「けれ」で結ぶ係り結びで、初音を聞いても語れない甲斐のなさを嘆いている。

むごん:修行として一定期間言葉を発しないこと、無言の行
はつね:その年初めて聞く鳥などの鳴き声
作者
西行
出典
山家集
前の歌
神垣のあたりに咲くもたよりあれや 木綿かけたりと見ゆる卯の花
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ほととぎす卯月の忌にい籠るを 思ひ知りても来鳴くなるかな