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ほととぎす聞かぬものゆゑ迷はまし
春を尋ねぬ山路なりせば

歌の意味
ほととぎすの声も聞けないうえに、道にまで迷っていたことだろう。もしここが、春に花を尋ねて通ったことのない山路であったならば。
鑑賞
夏歌 188

詞書「郭公歌五首よみけるに」
 詞書から、ほととぎすの歌を五首詠んだうちの一首目であることがわかる。ほととぎすを聞こうと山路に分け入ったが、その声は聞けない。春に花を尋ねて通い慣れた山路だから迷わずにすんだが、そうでなければ、声も聞けないうえに道にまで迷っていただろう、と詠む。反実仮想の「まし」と「せば」を用い、春の花見の経験が夏の山路で役立ったことをいう。
 春の花を尋ねた山路と、夏のほととぎすを尋ねる山路とを重ね、季節をまたいで同じ道をたどる山住まいの暮らしが表されている。ここから五首、ほととぎすの歌が続く。

 初句「ほととぎす」は、尋ねてきた鳥として示されている。
 二句「聞かぬものゆゑ」の「ものゆゑ」は逆接で、聞けないのに、の意である。
 三句「迷はまし」の「まし」は反実仮想の助動詞で、結句の「せば」と呼応し、道に迷っていただろう、と実際には起こらなかったことを想像している。三句切れで、下の句と倒置になっている。
 四句「春を尋ねぬ」は、春に花を尋ねて通ったことのない、の意である。
 結句「山路なりせば」の「せば」は過去の助動詞「き」の未然形に「ば」が付いた仮定で、三句の「まし」と組んで反実仮想を作っている。

やまぢ:山の中の道
作者
西行
出典
山家集
前の歌
郭公聞かで明けぬる夏の夜の 浦島の子はまことなりけり
次の歌
待つことは初音までかと思ひしに 聞きふるされぬほととぎすかな