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ほととぎす名残あらせて帰りしが
聞き捨つるにもなりにけるかな

歌の意味
ほととぎすの声に名残を残しておこうと思って帰ったのだが、それがかえって聞き捨てたことにもなってしまったのだなあ。
鑑賞
夏歌 200

詞書「五月晦日に、山里にまかりて、立ち帰りけるを、郭公もすげなく聞き捨てて帰りし事など、人の申しつかはしたりける返事に」
 詞書から、五月の末に山里へ出かけてすぐに帰ってきたことについて、ほととぎすの声もそっけなく聞き捨てて帰ってしまったなどと、人が言ってよこした手紙への返事として詠んだ歌であることがわかる。名残を残すためにあえて早く帰ったのだが、それが聞き捨てたと受け取られることにもなってしまった、と相手の言葉を受けて答えている。
 相手の「聞き捨てて」という言葉をそのまま下の句に取り込み、名残を惜しんだ心と、すげないと見られた振る舞いとの食い違いを、軽い弁明の形で詠んでいる。

 初句「ほととぎす」は、山里で聞いたほととぎすを指す。
 二句「名残あらせて」は、名残を残させて、の意で、もっと聞きたいという思いを残しておくために、という気持ちを表す。
 三句「帰りしが」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、「が」は逆接を表し、帰ったのだが、の意となる。
 四句「聞き捨つるにも」は、詞書にある相手の言葉「聞き捨てて」を受けたもので、聞いてそのまま捨て置くことをいう。
 結句「なりにけるかな」の「にける」は完了と過去で、そうなってしまったのだったと、詠嘆の「かな」で結んでいる。

つごもり:月の最後の日、月末
なごり:物事が過ぎ去った後に残る気配や思い
ききすつ:聞いてそのまま捨て置く、聞き流す
作者
西行
出典
山家集
前の歌
郭公聞くにとてしも籠らねど 初瀬の山はたよりありけり
次の歌
空晴れて沼の水嵩を落とさずは あやめも葺かぬ五月なるべし