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空晴れて沼の水嵩を落とさずは
あやめも葺かぬ五月なるべし

歌の意味
空が晴れて沼の水かさが減らないのなら、菖蒲を刈って軒に葺くこともできない五月になるにちがいない。
鑑賞
夏歌 201

詞書「題しらず」
 五月雨が降り続いて沼の水かさが増し、菖蒲を刈ることもできない。空が晴れて水かさが落ちなければ、端午の節句に菖蒲を軒に葺くこともない五月になってしまうだろう、と案じる歌である。五月雨の長雨と、端午の節句の菖蒲とを取り合わせている。
 これまでのほととぎすの歌から、端午の節句の菖蒲を詠む歌へと題材が移る、その最初の一首である。次歌以降も菖蒲が続けて詠まれている。

 初句「空晴れて」は、雨がやんで空が晴れることをいう。
 二句「沼の水嵩を」の「水嵩」は水の量をいい、長雨で沼の水が増していることを示す。
 三句「落とさずは」の「ずは」は打消の仮定で、減らさないならば、の意である。
 四句「あやめも葺かぬ」は、端午の節句に菖蒲を軒に挿して葺く風習を踏まえ、それもできないことをいう。
 結句「五月なるべし」の「べし」は確信をもった推量で、そういう五月になるにちがいない、と結ぶ。

みかさ:水の量、水かさ
あやめ:菖蒲、五月五日の節句に軒に葺いて邪気を払った
ふく:屋根を覆う、菖蒲などを軒に挿す
作者
西行
出典
山家集
前の歌
ほととぎす名残あらせて帰りしが 聞き捨つるにもなりにけるかな
次の歌
桜散る宿を飾れるあやめをば 花菖蒲とや言ふべかるらん