桜散る宿を飾れるあやめをば
花菖蒲とや言ふべかるらん
- 歌の意味
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桜の花が散りかかる僧坊を飾っている菖蒲を、花菖蒲とでも言うべきなのだろうか。
- 鑑賞
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夏歌 202
詞書「高野の中院と申す所に、菖蒲葺きたる坊の侍りけるに、桜の散りけるが珍しく覚えて、よみける」
詞書から、高野山の中院という所で、菖蒲を軒に葺いた僧坊に桜が散りかかっているのが珍しく思われて詠んだ歌であることがわかる。端午の節句に葺いた菖蒲に、高野山の遅い桜の花びらが散りかかっている様子を見て、花の付いたこの菖蒲こそ花菖蒲と呼ぶべきだろうか、と興じている。
平地では春の花である桜が、山深い高野では五月の菖蒲と同時に見られることへの驚きが一首の背景にある。花菖蒲という言葉を、桜の花が付いた菖蒲という意味にとりなした機知の歌であり、次歌はこれに答えた坊の稚児の歌である。
初句「桜散る」は、桜の花びらが散りかかることをいう。山深い高野山では五月にも桜が残っていたことを示す。
二句「宿を飾れる」の「宿」は菖蒲を葺いた僧坊を指し、「飾れる」の「る」は存続の助動詞「り」の連体形で、飾っている、の意である。
三句「あやめをば」は、軒に葺いた菖蒲を取り立てている。
四句「花菖蒲とや」は、桜の花が付いた菖蒲を、花菖蒲という名にとりなしている。「や」は疑問を表す。
結句「言ふべかるらん」の「らん」は四句の「や」と呼応する推量で、そう言うべきなのだろうか、と軽く問いかけて結ぶ。
ちゅういん:高野山にある院の一つ
ばう:僧の住む建物、僧坊
はなさうぶ:花を付けた菖蒲、ここでは桜の花びらの付いた菖蒲にとりなす
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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空晴れて沼の水嵩を落とさずは あやめも葺かぬ五月なるべし
- 次の歌
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散る花を今日のあやめの根にかけて 薬玉ともや言ふべかるらん