散る花を今日のあやめの根にかけて
薬玉ともや言ふべかるらん
- 歌の意味
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散る桜の花を、今日の節句の菖蒲の根に掛けたのだから、これはむしろ薬玉とでも言うべきなのだろうか。
- 鑑賞
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夏歌 203
詞書「坊なる稚児これを聞きて」
詞書から、前歌を聞いた僧坊の稚児が詠んだ返歌であることがわかる。前歌が桜の散りかかった菖蒲を花菖蒲と呼ぶべきかと興じたのを受けて、散る花を今日の菖蒲の根に掛けたのだから、むしろ薬玉と言うべきではないか、と答えている。
薬玉は端午の節句に、香料を包んで菖蒲や蓬などの草花で飾り、五色の糸を垂らして柱などに掛けたものである。前歌の「花菖蒲とや言ふべかるらん」に対して「薬玉ともや言ふべかるらん」と同じ形の結句で答え、花菖蒲を薬玉へととりなし直した機知の応酬となっている。
作者は僧坊に仕える稚児で、名は伝わらないため、作者名は記さない。
初句「散る花を」は、前歌に詠まれた、菖蒲に散りかかる桜の花を受けている。
二句「今日のあやめの」の「今日」は五月五日の端午の節句をいう。
三句「根にかけて」は、菖蒲の根に花を掛けて、の意で、薬玉の飾りつけになぞらえている。
四句「薬玉ともや」は、端午の節句の飾りである薬玉に見立てている。「や」は疑問を表す。
結句「言ふべかるらん」は、前歌の結句と同じ句を用い、花菖蒲よりむしろ薬玉と言うべきだろうかと切り返して結んでいる。
ちご:寺院に仕えて学問や雑用をした少年
くすだま:端午の節句に香料を袋に入れ、菖蒲や蓬で飾り五色の糸を垂らしたもの
- 出典
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山家集
- 前の歌
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桜散る宿を飾れるあやめをば 花菖蒲とや言ふべかるらん
- 次の歌
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折にあひて人に我が身や引かれまし 筑摩の沼のあやめなりせば