折にあひて人に我が身や引かれまし
筑摩の沼のあやめなりせば
- 歌の意味
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もし私が筑摩の沼の菖蒲であったならば、ちょうどよい節句の折に出会って、人に引かれもしただろうか。
- 鑑賞
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夏歌 204
詞書「さる事ありて、人のもの申しつかはしたりける返事に、五日」
詞書から、ある事情があって人が手紙をよこしてきた際、五月五日に返事として詠んだ歌であることがわかる。端午の節句には菖蒲が根ごと引き抜かれて珍重されるが、もし自分が筑摩の沼の菖蒲であったなら、この折に人に引かれもしただろうか、と詠む。世を離れて人から顧みられない自分の身の上を、節句の菖蒲になぞらえて返している。
「さる事」の内容は詞書からは明らかでないが、端午の節句の日付を添えた返事であり、その日の風物である菖蒲を借りて自分の思いを託している。
初句「折にあひて」は、ちょうどよい時節にめぐりあって、の意で、端午の節句を指す。六音の字余りである。
二句「人に我が身や」の「や」は疑問を表す係助詞で、三句の「まし」で結ぶ。
三句「引かれまし」の「引く」は、節句の菖蒲を根ごと引き抜くことと、人に心を引かれ誘われることとを重ねている。「まし」は反実仮想の助動詞で、結句の「せば」と呼応する。三句切れで、下の句と倒置になっている。
四句「筑摩の沼の」は、近江国の歌枕である筑摩の沼で、菖蒲の名所として知られた。
結句「あやめなりせば」の「せば」は過去の助動詞「き」の未然形に「ば」が付いた仮定で、もし菖蒲であったならば、と三句の反実仮想を支えて結ぶ。
ひく:根ごと引き抜く、また人の心を引き寄せる
つくまのぬま:近江国の歌枕、菖蒲の名所
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
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散る花を今日のあやめの根にかけて 薬玉ともや言ふべかるらん
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西にのみ心ぞかかるあやめ草 この世ばかりの宿と思へば