古典和歌stream

水なしと聞きてふりにし勝間田の
池改むる五月雨の頃

歌の意味
水がないと聞いて久しく古びてしまった勝間田の池を、すっかり改めて水で満たしてしまう五月雨の頃であることよ。
鑑賞
夏歌 225

詞書は前の歌に続き「ある所に五月雨の歌十五首よみ侍りしに、人にかはりて」
 十五首の十一首目である。勝間田の池は水のない池として古くから聞こえ、そのまま古びてしまっていたが、五月雨はその池をも水で満たし、評判を改めてしまう、と詠む。
 勝間田の池は大和国の歌枕で、水のない池として詠まれてきた。本巻の第二百十六首で水無瀬川が舟渡りをするほど水を満たすと詠んだのと同じく、水のないことで知られる名所が五月雨で一変するという趣向である。

 初句「水なしと」は、水がないと、の意で、勝間田の池の評判をいう。
 二句「聞きてふりにし」の「ふり」は掛詞で、年を経て古びる意の「古り」と、雨が「降り」とを掛けている。「にし」は完了と過去で、古びてしまった、の意となる。
 三句「勝間田の」は、大和国の歌枕である勝間田の池をいう。
 四句「池改むる」は、水のない池という様子を改めて、水で満たすことをいう。
 結句「五月雨の頃」は体言止めで、五月雨の歌群に共通する結句で結ぶ。

ふる:年を経て古びる意の「古る」と、雨が「降る」意とを掛ける
かつまたのいけ:大和国の歌枕、水のない池として詠まれた
あらたむ:改める、新しくする
作者
西行
出典
山家集
前の歌
五月雨の晴れぬ日数のふるままに 沼の真菰は水隠れにけり
次の歌
五月雨は行くべき道のあてもなし 小笹が原もうきに流れて