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思はずにあな釣りにくき小川かな
五月の雨に水まさりつつ

歌の意味
思いがけず、ああ、なんとも釣りにくくなった小川であることよ。五月の雨で水かさがどんどん増していって。
鑑賞
夏歌 229

詞書は前の歌に続き「ある所に五月雨の歌十五首よみ侍りしに、人にかはりて」
 十五首の結びの一首である。いつもは手軽に釣りのできる小川が、五月の長雨で思いがけず水かさを増し続け、なんとも釣りにくくなってしまった、と詠む。身近な小川の変わりように、五月雨の激しさを軽妙にとらえている。
 十五首は、藻塩の煙を立てられない浦の海人に始まり、川や沼、池、田、道とさまざまな水辺の景を詠み継いで、身近な小川の釣りでしめくくられている。十五首の多くが「五月雨の頃」で結ばれる中、この歌は「五月の雨に」と言いかえて下の句に置き、詠みぶりを変えて一連を閉じている。

 初句「思はずに」は、思いがけず、の意である。
 二句「あな釣りにくき」の「あな」は感動を表し、ああ、なんとも釣りにくい、と嘆いている。
 三句「小川かな」は、小さな川をいい、詠嘆の「かな」で三句切れとなる。
 四句「五月の雨に」は、五月雨をいう。十五首の多くが結句に置いた「五月雨の頃」に代えて、ここでは四句で五月の雨を示している。
 結句「水まさりつつ」の「つつ」は継続を表し、水かさがどんどん増し続けていくさまを示して、三句の嘆きの理由を後から述べている。

こがは:小さな川
まさる:数量が増える、水かさが増す
作者
西行
出典
山家集
前の歌
川端の淀みに止まる流れ木の 浮橋渡す五月雨の頃
次の歌
風をのみ花なき宿は待ち待ちて 泉の末をまた掬ぶかな