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杣人の暮れに宿借る心地して
庵を叩く水鶏なりけり

歌の意味
杣人が日暮れに宿を借りようと戸を叩くような気がしたが、庵を叩いていたのは水鶏であった。
鑑賞
夏歌 232

詞書「深山水鶏」
 詞書「深山水鶏」の題で詠まれた歌である。深い山の庵で、夕暮れに戸を叩く音がしたので、木こりが一夜の宿を借りに来たのかと思ったら、それは水鶏の鳴き声であった、と詠む。水鶏の鳴き声は戸を叩く音に似ているとされ、その古来の見立てを、山中の庵という場面に移している。
 都の家では恋人の訪れと聞きまがう水鶏の声を、深山では杣人の訪れと聞きまがうところに、山住まいらしい工夫がある。

 初句「杣人の」の「杣人」は、山で木を切り出す人、木こりをいう。
 二句「暮れに宿借る」は、日暮れに一夜の宿を借りることをいう。
 三句「心地して」は、そのような気がして、の意である。
 四句「庵を叩く」は、庵の戸を叩くことで、水鶏の鳴き声が戸を叩く音に聞こえることを踏まえている。
 結句「水鶏なりけり」の「なりけり」は、水鶏であったのだと気づいた詠嘆を表して結ぶ。

そまびと:山で木を切り出す人、木こり
いほり:草木で造った粗末な住まい
くひな:水辺にすむ鳥、その鳴き声が戸を叩く音に似るとされた
作者
西行
出典
山家集
前の歌
水の音に暑さ忘るるまとゐかな 梢の蝉の声もまぎれて
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夏山の夕下風の涼しさに 楢の木陰の立たま憂きかな