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かき分けて折れば露こそこぼれけれ
浅茅に交じる撫子の花

歌の意味
草をかき分けて折り取ると、露がこぼれ落ちたことよ。浅茅に交じって咲く撫子の花は。
鑑賞
夏歌 234

詞書「撫子」
 詞書「撫子」の題で詠まれた歌である。丈の低い茅の中に交じって咲いている撫子を、草をかき分けて折り取ると、たまっていた露がはらはらとこぼれ落ちた、と詠む。可憐な撫子と、それを包む浅茅の露とを取り合わせ、夏の野の清らかさを描いている。
 撫子は「撫でし子」に通じ、いとおしい子にたとえられる花である。露がこぼれる様子にも、その可憐さが重ねられている。

 初句「かき分けて」は、茂った草を手で押し分けて、の意である。
 二句「折れば露こそ」の「折れば」は已然形に「ば」が付いた形で、折ると、の意である。係助詞「こそ」で露を強調している。
 三句「こぼれけれ」は、二句の「こそ」を受けて已然形「けれ」で結ぶ係り結びで、三句切れである。
 四句「浅茅に交じる」の「浅茅」は丈の低い茅をいい、その中に交じって咲いていることをいう。
 結句「撫子の花」は体言止めで、露をこぼした撫子を示して結ぶ。下の句が上の句の対象を後から示す倒置となっている。

あさぢ:丈の低い茅
なでしこ:夏から秋に咲く淡紅色の花、いとしい子にたとえられる
作者
西行
出典
山家集
前の歌
夏山の夕下風の涼しさに 楢の木陰の立たま憂きかな
次の歌
露重み園の撫子いかならん 荒く見えつる夕立の空