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旅人の分くる夏野の草茂み
葉末に菅の小笠はづれて

歌の意味
旅人が分けて進む夏の野は草が深く茂っているので、旅人のかぶる菅の小笠だけが、草の葉先からはずれてのぞいて見える。
鑑賞
夏歌 237

詞書「旅行草深と云ふ事を」
 詞書から、「旅行草深し」という題で詠まれた歌であることがわかる。夏の野を分けて行く旅人の姿は、深く茂った草に隠れて見えず、ただ菅の小笠だけが草の葉先からのぞいている、と詠む。草の深さを、笠だけが見えるという一点で印象的に描いている。
 次歌も同じ題の歌で、夏の野を行く旅人を詠んでいる。

 初句「旅人の」は、四句以下の小笠の主として示されている。
 二句「分くる夏野の」は、草を分けて進む夏の野をいう。
 三句「草茂み」は、形容詞の語幹に「み」が付いた形で、草が茂っているので、と理由を表す。
 四句「葉末に菅の」の「葉末」は草の葉の先をいい、「菅」は笠の材料となる草である。
 結句「小笠はづれて」は、菅の小笠が草の葉先から外れて、つまりのぞいて見えて、の意で、笠だけが動いていく情景を余情として残している。

はずゑ:草木の葉の先
すげ:水辺に生える草、笠や蓑の材料にした
をがさ:小さな笠
作者
西行
出典
山家集
前の歌
御秣に原の小薄しがふとて 臥所あせぬと鹿思ふらん
次の歌
雲雀あがる大野の茅原夏来れば 涼む木陰を尋ねてぞ行く