古典和歌stream

雲雀あがる大野の茅原夏来れば
涼む木陰を尋ねてぞ行く

歌の意味
雲雀が舞い上がる広い野の茅原も、夏が来ると草が茂り、涼むための木陰を探し求めて進んで行くことだ。
鑑賞
夏歌 238

詞書は前の歌に続き「旅行草深と云ふ事を」
 前歌と同じく「旅行草深し」の題の歌である。春には雲雀が空高く舞い上がる広い野の茅原も、夏になると草が深く茂り、そこを行く旅人は涼をとるための木陰を探しながら進んで行く、と詠む。
 雲雀のあがる春の野と、木陰を求める夏の野とを一首の中に重ね、季節の移り変わりの中を行く旅を描いている。前歌が草に埋もれる旅人の姿を外から描いたのに対し、この歌は旅人自身の求めるものを詠んでいる。

 初句「雲雀あがる」は、雲雀が空へ舞い上がることをいい、春の野の景を示す。六音の字余りである。
 二句「大野の茅原」は、広い野に茅の生い茂った原をいう。
 三句「夏来れば」は、已然形に「ば」が付いた確定条件で、夏が来ると、の意である。
 四句「涼む木陰を」は、涼むための木陰をいう。
 結句「尋ねてぞ行く」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「行く」で結ぶ係り結びで、木陰を探し求めて進むことを強めている。

ひばり:春に空高く舞い上がってさえずる小鳥
ちはら:茅の生い茂った原
作者
西行
出典
山家集
前の歌
旅人の分くる夏野の草茂み 葉末に菅の小笠はづれて
次の歌
照射する火串の松も替へなくに 鹿目合はせで明かす夏の夜