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照射する火串の松も替へなくに
鹿目合はせで明かす夏の夜

歌の意味
照射の火串に挿した松明を取り替えもしないうちに、鹿と目を合わせることもないまま明けてしまう、夏の短い夜であることよ。
鑑賞
夏歌 239

詞書「照射」
 詞書「照射」の題で詠まれた歌である。照射は、夏の夜に松明をともして鹿をおびき寄せ、その目が火に光るのを狙って射る狩りである。火串の松明を一度も取り替えないうちに、鹿と目を合わせることもなく夜が明けてしまう、と夏の夜の短さを詠んでいる。
 「目合はす」には眠る意もあり、狩人が一睡もしないまま夜を明かすことも響かせている。本巻の第百八十七首では夏の短夜を浦島の子の話に重ねたが、この歌では照射の狩りを通して同じ短夜をとらえている。

 初句「照射する」の「照射」は、夏の夜に松明をともして鹿をおびき寄せて射る狩りをいう。
 二句「火串の松も」の「火串」は、照射の松明を挟んで立てる木の串をいい、「松」はその松明である。
 三句「替へなくに」は、取り替えもしないのに、の意で、松明一本が燃えつきないほどの夜の短さを表す。
 四句「鹿目合はせで」は、鹿の目と火とが合わないまま、つまり鹿の目を見ることもなく、の意である。「目合はす」には眠る意もあり、眠らずに過ごすことも響かせている。
 結句「明かす夏の夜」は体言止めで、むなしく明けていく夏の短夜を示して結ぶ。

ともし:夏の夜に松明をともして鹿をおびき寄せて射る狩り、照射
ほぐし:照射の松明を挟んで立てる木の串、火串
めあはす:目を見合わせる、また眠る
作者
西行
出典
山家集
前の歌
雲雀あがる大野の茅原夏来れば 涼む木陰を尋ねてぞ行く
次の歌
夏の夜は篠の小竹の節近み そよやほどなく明くるなりけり