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露の散る芦の若葉に月冴えて
秋を争ふ難波江の浦

歌の意味
露が散る芦の若葉に月の光が冴え冴えとさして、秋の景色と美しさを競い合っているような難波江の浦であることよ。
鑑賞
夏歌 242

詞書「海辺夏月」
 詞書「海辺夏月」の題で詠まれた歌である。難波江の浦で、露の置いた芦の若葉に月の光が冴え冴えと照り映え、夏でありながら秋の景色と美しさを競うようだ、と詠む。露と冴えた月光という秋の景物を夏の海辺に見いだしている。
 前歌で蚊遣り火の煙に月が隠れる賤の伏屋を思いやったのに対し、この歌では海辺の月が明るく冴えわたっており、月を見ることのできない所と、月が秋と競うほど冴える所とが対になっている。

 初句「露の散る」は、露がこぼれ散ることをいい、秋を思わせる景物である。
 二句「芦の若葉に」は、夏に伸びる芦の若葉をいい、夏の季節を示す。
 三句「月冴えて」は、月の光が冷たく澄みわたることをいう。冴えた月はふつう秋や冬のものとされる。
 四句「秋を争ふ」は、夏の景でありながら秋の景と美しさを競うことをいう。
 結句「難波江の浦」は体言止めで、摂津国の歌枕である難波江を示して結ぶ。難波江は芦の名所として知られる。

さゆ:光や空気が冷たく澄みわたる
なにはえ:摂津国の難波の入り江、芦の名所の歌枕
作者
西行
出典
山家集
前の歌
夏の夜の月見ることやなかるらん 蚊遣火立つる賤の伏屋は
次の歌
掬び上ぐる泉に澄める月影は 手にも取られぬ鏡なりけり