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掬び上ぐる泉に澄める月影は
手にも取られぬ鏡なりけり

歌の意味
手ですくい上げる泉の水に澄んで映る月の光は、手に取ることのできない鏡であったことよ。
鑑賞
夏歌 243

詞書「泉に向かひて月を見ると云ふ事を」
 詞書から、「泉に向かひて月を見る」という題で詠まれた歌であることがわかる。泉の水を手ですくい上げると、そこに月が澄んで映っている。鏡のように見えるが、水とともにこぼれてしまい、手に取ることはできない、と詠む。
 月を鏡に見立てるのは古くからの趣向であるが、ここではすくい上げた泉の水に映る月を、手に取ろうとしても取れない鏡としている。次歌も同じ題で泉の月を詠んでおり、二首が並んでいる。

 初句「掬び上ぐる」は六音の字余りで、手で水をすくい上げることをいう。
 二句「泉に澄める」の「澄め」は澄みきって映ることで、「る」は存続の助動詞「り」の連体形である。
 三句「月影は」の「月影」は月の光、また水に映る月の姿をいう。
 四句「手にも取られぬ」の「れ」は可能の助動詞「る」の未然形で、手に取ることもできない、の意である。
 結句「鏡なりけり」は、月影を鏡に見立て、「なりけり」で気づきの詠嘆を表して結ぶ。

むすびあぐ:手で水をすくい上げる
つきかげ:月の光、水に映る月の姿
作者
西行
出典
山家集
前の歌
露の散る芦の若葉に月冴えて 秋を争ふ難波江の浦
次の歌
掬ぶ手に涼しき影を慕ふかな 清水に宿る夏の夜の月