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掬ぶ手に涼しき影を慕ふかな
清水に宿る夏の夜の月

歌の意味
すくう手の中の涼しい光を、名残惜しく慕うことよ。清水に宿って映る夏の夜の月の光を。
鑑賞
夏歌 244

詞書は前の歌に続き「泉に向かひて月を見ると云ふ事を」
 前歌と同じく「泉に向かひて月を見る」という題の歌である。清水を手ですくうと、そこに夏の夜の月が宿って涼しげに光る。その手の中の涼しい光がこぼれ去るのを惜しみ、慕わしく思う、と詠む。
 前歌が手に取れない鏡として泉の月を詠んだのに対し、この歌は手にすくった月の涼しさを慕う心を詠んでおり、同じ泉の月を、とらえられないものと、慕わしいものとの二つの面から詠み分けている。

 初句「掬ぶ手に」は、水をすくう手の中に、の意で、前歌の初句「掬び上ぐる」を受けている。
 二句「涼しき影を」の「影」は光をいい、手の中の水に映る涼しげな月の光を指す。
 三句「慕ふかな」は、名残惜しく思い慕うことをいい、詠嘆の「かな」で三句切れとなる。
 四句「清水に宿る」の「宿る」は、月が水に映ってとどまることをいう。
 結句「夏の夜の月」は体言止めで、慕う対象である月を後から示す倒置になっている。

しみづ:地中からわき出る清らかな水
やどる:光や影が水などに映ってとどまる
作者
西行
出典
山家集
前の歌
掬び上ぐる泉に澄める月影は 手にも取られぬ鏡なりけり
次の歌
夏の夜も小笹が原に霜ぞ置く 月の光の冴えし渡れば