おのづから月宿るべき隙もなく
池に蓮の花咲きにけり
- 歌の意味
-
月が自然と映って宿るはずのすき間もないほどに、池一面に蓮の花が咲いたことよ。
- 鑑賞
-
夏歌 248
詞書「蓮満池と云ふ事を」
詞書から、「蓮池に満つ」という題で詠まれた歌であることがわかる。池の水面に月が映るすき間さえないほど、一面に蓮の花が咲き満ちている、と詠む。池を覆う蓮の豊かさを、月の宿る場所がないという形で表している。
前歌が月光で池に氷が張ったように見えると詠んだのに対し、この歌では同じ池の水面が蓮に覆われて月が映る余地もないとしており、月の満ちる池と蓮の満ちる池とが対になっている。蓮は極楽浄土の花でもあり、池を満たす蓮の姿には浄土を思わせる趣もある。
初句「おのづから」は、自然と、ひとりでに、の意で、二句の「月宿る」にかかる。
二句「月宿るべき」の「宿る」は、月が水面に映ってとどまることをいう。
三句「隙もなく」は、すき間もなく、の意で、蓮が水面を覆いつくしているさまを表す。
四句「池に蓮の」の「蓮」は、はすの古名である。
結句「花咲きにけり」の「にけり」は、咲いてしまったことよ、と気づいた詠嘆を表して結ぶ。
はちす:蓮の古名
ひま:すき間
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
影冴えて月しもことに澄みぬれば 夏の池にもつらら居にけり
- 次の歌
-
夕立の晴るれば月ぞ宿りける 玉揺りすうる蓮の浮葉に