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松風の音のみならず石走る
水にも秋はありけるものを

歌の意味
松風の音だけでなく、岩の上を激しく流れる水の音にも、秋はあったのだなあ。
鑑賞
夏歌 251

詞書「松風如秋と云ふ事を北白川なる所にて人々よみて、又水声に有秋と云ふ事を重ねけるに」
 詞書から、北白川という所で人々が「松風秋の如し」という題を詠み、さらに「水声に秋有り」という題を重ねて詠んだ時の歌であることがわかる。松風の音に秋を感じるだけでなく、岩の上を勢いよく流れる水の音にも秋があったのだ、と詠み、二つの題を一首にまとめている。
 本巻の第二百三十一首も北白川で詠まれた歌で、水の音に暑さを忘れると詠んだが、この歌では同じ北白川の水の音に秋を聞きとっており、同じ地の水音を、暑さを忘れる涼と、秋の気配との二つの面から詠んでいる。

 初句「松風の」は、松の梢を吹く風をいい、その音は秋の寂しさを思わせるものとされた。
 二句「音のみならず」は、音だけでなく、の意で、一つ目の題「松風秋の如し」を受けている。
 三句「石走る」は、岩の上を水が激しく流れることをいい、四句の「水」にかかる。
 四句「水にも秋は」は、二つ目の題「水声に秋有り」を受け、水の音にも秋があることをいう。
 結句「ありけるものを」の「ける」は気づきの詠嘆で、「ものを」は、のになあ、という余情を残して結ぶ。

まつかぜ:松の梢を吹く風、その音
いしばしる:石や岩の上を水が激しく流れる
作者
西行
出典
山家集
前の歌
まだきより身にしむ風の気色かな 秋先立つる深山辺の里
次の歌
山里は外面の真葛葉を茂み うら吹き返す秋を待つかな